会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ
本当はもう少し時間を置いてエントリするつもりでしたが,前回の失態もあり,また,前向きになれる書籍だと思いましたので,いつもどおりのタイミングでエントリしました。(ですが,一度エントリして後半部分が欠落するというアクシデントも……)
会社の上司のふとした思いつきで乗せられたマグロ船。会社員の著者は,その船上での漁師たちとの会話の中から,いくつのも気付きを得て,そして綴られていきます。漁師たちの会話は方言のままで,全体の文章も堅苦しくはありません。飽きることなく読める200ページの新書でした。
会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ (マイコミ新書)
- 作者: 齊藤正明
- 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
- 発売日: 2009/02/21
- メディア: 新書
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すこし,引用してみます。
著者,齊藤さんと船長との会話
「ええか,齊藤。おいどーらがマグロを捕りに行くとき,一番大事なことを知っちょるか?」
「いえ,知りません」
「それは『決める』ことど。おいどーらも,どこにマグロがいるかなんてわからん。情報を集めて,『ここで漁をしよう』と,えいやで決めちょる。当たり前じゃが,そこにマグロがいるなんて保証はねーんど」
「保証がないのに,決めるのって勇気がいりません?」
「そりゃ,勇気がいるに決まっちょろーが。でもの,決めないといつまでも海をウロウロすることになるんど。どうせ,ウロウロしたって,『ここでならマグロが必ず捕れる』なんてわからんど。それであれば,早く『ここで漁をする』と決めて,漁をしたほうがええ。マグロが捕れるかどうかは,じっくり考えても,すぐに決めても,結局50%ど。それであれば,早めに舵を取ったほうがええ。ダメだったら次の漁場に移動すりゃええことじゃねーか。決めた回数を多くすれば,漁ができる回数もふやせるからの」(p.22)
齊藤さんと親方との会話
「なんじゃ齊藤。もうダメになっちょるのか?」
「波,キツイですね。」
「こんなもんは凪じゃ。船酔いしたときには,メシをいっぱい食うて,吐くのを何回も繰り返せばすぐ慣れるんど」
「メシをいっぱい食べろと言われても,とても食欲が……」
「そげーなこと,俺が知るかい! でもの,今のうち,たっぷり酔うちょけ。きっと後でいい経験になる。齊藤は船に乗るまで,毎日生きているのが楽しかったか?」
こう親方にたずねられたとき,私はマグロ船に乗せられた経緯などを思い出し,「どちらかと言うとつらい毎日だったかと思います」と,答えると,親方は次のように言いました。
「それは齊藤がボケちょるんど。『毎日がつらい』なんぞ,毎日メシが食えているやつが言うかい! 世界には,メシが食えん人らが大勢いるんど」(p.26-27)
さらに親方は続けます。
「人間はの,幸せのなかにいるときは,幸せに気づいておらんち。おいどーらが釣り上げると,マグロはバタバタと大暴れしよる。海から引き離されて初めて,海のありがたみがわかったんじゃねーんかの? 齊藤も,陸(おか)から離れて,陸にいられることのありがたみがわかったんじゃねーんか?」(p.28)
親方はこうも言います。
「自信に理由も何もあるかい! 信じりゃええことじゃねーか!『信じる』っちゅーんは『割り切る』っちゅーことじゃろ? 本当に何とかなるなんて,わかるわけねーんど」(p.152)
海の男は身体も心も強靭ですね。
ぼくも含めて,いま,自分を信じることが必要な人がどれだけいるんでしょうか。割り切れている人がどれだけいるんでしょうか? 受験生,就職を目指す人,社会に出て間もない人,自分の立ち位置を確認したい人…… そんな方々に,なにかしら方向性を見出してくれるかも知れません。
なお,関連図書としてコミック版もあるようです。
マグロ船で学んだ人生哲学 -ボクの生き方を変えた漁師たちとの一問一答集 (講談社BIZ)
- 作者: 齊藤正明,腹肉ツヤ子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/07/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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